噛む力で認知症予防
2025.09.05
「最近、固いものが少し食べにくくなった」または「入れ歯を入れてもあまり噛まなくなった」・・・そんな変化はありませんか?
年齢を重ねると、歯やあごの筋肉、そして舌の動きにも少しずつ衰えが出てきます。
しかし、噛む力の低下は単に食事の楽しみを減らすだけではありません。実は“脳の健康”にも深く関わっているのです。
【噛むと脳が活性化する仕組み】
食べ物を噛むと、歯やあご、口の中の感覚器から脳に信号が送られます。この刺激が脳全体の血流量を増やし、特に「海馬」という記憶や学習を担う部分を活性化させます。海馬は加齢や認知症で萎縮しやすい部位ですが、噛むことによってその働きを保つことができると考えられています。
実際、動物実験では「歯を失ったマウスは記憶力が低下する」ことが確認され、人間の研究でも「よく噛める人ほど認知機能が高い」傾向が報告されています。
【自分の歯の本数と認知症リスク】
厚生労働省や日本歯科医師会の調査によると、自分の歯が20本以上残っている高齢者は、そうでない人に比べて認知症の発症リスクが低いという結果が出ています。
歯を失うと噛む回数が減り、脳への刺激が減少。さらに、やわらかい物中心の食生活に偏ることで、ビタミン・ミネラル・たんぱく質といった栄養素が不足し、脳や全身の健康に悪影響を与えます。
【噛む力を維持する3つのポイント】
1. 一口30回を目安によく噛む
ゆっくり噛むことで消化が良くなり、満腹感も得やすくなります。糖尿病や肥満の予防にも効果的です。
2. 噛みごたえのある食材を選ぶ
レンコン、ゴボウ、きのこ類、ナッツ、するめなど、自然に噛む回数が増える食品を日常に取り入れましょう。

3.入れ歯・ブリッジ・インプラントを正しく使う
合わない入れ歯は噛む力を奪い、食事量や栄養状態を悪化させます。違和感や痛みがあれば放置せず、歯科医院で調整しましょう。
【噛むことは「脳の運動」】
運動不足が体を弱らせるように、噛む刺激が減ると脳も衰えます。食事はただの栄養補給ではなく、“脳のトレーニング”の時間です。「やわらかい物が楽だから」ではなく、「噛むから元気になる」という意識に切り替えてみましょう。
よく噛むと唾液がたくさん分泌されます。唾液は単なる水分ではなく虫歯や歯周病・口臭の原因となる細菌を洗い流し殺菌する作用があったり、酸で溶けた歯を修復したり、免疫力がアップする健康にはとても欠かせない存在です。現代人は柔らかい食べ物が多くなり噛む回数が大幅に減っています。弥生時代の食事は完食するまで1時間、およそ4000回の咀嚼をしていましたが、現代人は10分程度で食事を済ませてしまい、約620回しか咀嚼していないというデータがあります。現代食がいかに柔らかく咀嚼能力が低下していることが分かります。そして一日の咀嚼回数が多い高齢者ほど認知機能の低下が少ないという結果が出ていて1回の食事で1000回以上の方と500回未満の方を比較すると認知症発症リスクに1.5倍の差があることがわかってきています。このようなことから意識的に噛む回数を増やすことが認知症予防において重要な要素となります。

60代は、まだまだ脳も体も元気を保てる年代です。今日のひと口が、未来のあなたの記憶と生活の質を守ります。
【まとめ】
日常のケアとともに歯科医院での専門的なケアも重要です。定期的な歯科検診により虫歯や歯周病の早期発見治療ができ、歯の喪失を防ぐ可能性を高くすることができます。そして噛み合わせの調整も重要です。わずかな噛み合わせのずれも長時間続くと咀嚼効率の低下につながります。認知症予防のために特別なことをする必要はありません。まずは1日の食事で1口30回噛むことから始めてみてください。そして定期的な歯科検診により口腔内の健康を維持し必要に応じた治療を受けることで生涯にわたって噛む力を維持していきましょう。