根面う蝕
2025.04.06
根面う蝕という名を聞いたことがありますか?
通常虫歯のできやすい部分には、歯の嚙み合わせの溝の部分、歯と歯の間、歯と歯茎の境といった歯の汚れの多い場所があげられます。
今回は根面う蝕、したがって歯の根っこの部分にできる虫歯についてお話をしていきたいと思います。
日本において高齢化社会のなか、お口の中の健康の大切さが認識され始めた結果、80歳の方が20本以上の歯を残せるようにする意識が高くなってきたように思われます。その中で根面う蝕が急増してきています。70代の65%、80代では70%のかたが、少なくとも1本は口腔内に根面う蝕の歯を持っているとのデータもありますが、高齢者に限られているわけではなく若年層でも油断をしてしまうと罹患してしまいます。
目次
根面う蝕とは?
主に歯周病や加齢現象などから歯肉が下がり、歯の根元の部分が露出した部分を「根面」と呼びます。さらにその部分が虫歯になった状態を「根面う蝕」と言います。
そして露出した歯の根面は象牙質やセメント質と呼ばれ、ヒトの身体の中で最も硬い組織と言われるエナメル質(歯冠部)よりも軟らかく、“酸”に弱いことで虫歯のリスクが非常に高くなります。
エナメル質と象牙質の違い
エナメル質は成分の97%がハイドロキシアパタイトと呼ばれる無機質から構成され非常に硬く丈夫な組織です。治療時に切削する際はダイヤモンドのバーを使用しなければ削れないほどです。一方、象牙質にもハイドロキシアパタイトが含まれますが70%程度で残りはコラーゲンなどの有機質から構成されています。
歯根面は外からの刺激には弱い性質を持っていて特に“酸”に対する刺激には弱いのです。虫歯はそもそもエナメル質、象牙質ともに虫歯菌が産生する“酸”によって歯質が溶けて進行して行きます。
根面齲蝕が厄介な理由
◎ 早期発見が非常に困難
根面の象牙質はもともと黄色味がかかっていて、できはじめの虫歯は色がうっすら変化する程度のため、初期の発見は非常に難しいです。
◎ 自覚症状がないことが多い
根面う蝕は「しみる」「痛い」といった自覚症状がほとんどなく、口唇で隠れてしまう部分のため鏡などでも見えにくく、虫歯になっていることも気づかないまま進行してしまっているケースが多いです。根面の虫歯は数年かけて少しずつ進行することもあれば短期間であっという間に進行していくこともあります。
◎ ケアが難しい
根面は歯ブラシが届きにくく、当てているつもりでも当たっていないことが多いために磨き残しも多くなってしまいやすいです。
◎ 治療が難しく治療後も長持ちしにくい
根面にできてしまった虫歯が歯茎の中や、根の深いところにまで広がってしまった場合、虫歯の部分をしっかり除去しようとする時も届きにくく詰め物の治療が難しくなります。そうなると治療できた歯も以前より弱くなってしまい、長持ちもしにくくなってしまいます。場合によっては抜歯も検討しなくてはならないかもしれません。
根面う蝕を予防するには?
初期の根面に対しては定期的に歯科医院で高濃度のフッ素を塗ることにより虫歯の進行を抑えていきます。セルフケアとしてはフッ素入りの歯磨き粉やフッ素洗口などをお薦めします。そして根面う蝕というものは歯肉が下がって
た結果、虫歯になりやすい根面が露出することでできるものですから、“歯肉を下げない”“根を露出させない”ためには歯周病の予防が大切です。
そのためには日常的なケアとしてフロスや歯間ブラシをしっかり使用し、歯科医院でのプロフェッショナルケアを定期的に行うとよいでしょう。