【歯科医解説】インプラント術後の痛み|原因と5つの緩和方法
2025.03.11
皆さん、こんにちは。
群馬県前橋市にある前橋かんだ歯科・矯正歯科の院長 神田 雄紀です。
「インプラント手術後の痛みがいつまで続くのか心配…」「仕事に影響が出ないか不安…」「この痛みは正常なのかどうかわからない…」
そう思われている方も多いのではないでしょうか。
実は、インプラント術後の痛みは、手術の種類や個人差によって異なりますが、適切な対処法を知っておくことで、ほとんどの場合、痛みを和らげることができます。
この記事では、歯科医の専門的な知見をもとに、インプラント術後に起こる痛みの原因と、すぐに実践できる5つの緩和方法について、わかりやすく解説していきます。
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目次
インプラント術後の正常な痛みとは|痛みの種類と期間
インプラント手術を受けた患者様の多くが術後に痛みを経験します。この痛みは治療の過程で発生するもので、多くの場合は正常な反応であり心配する必要はありません。ただし、痛みの種類や期間は患者様によって異なります。
インプラント手術直後の痛みについて
手術直後は麻酔の効果で痛みを感じないことが多いですが、麻酔が切れるとともに痛みが出現します。この痛みは手術によって切開や剥離された組織の修復過程で生じるもので、炎症反応の一環として起こります。痛みの程度は手術の難易度や個人差によって異なりますが、通常は鎮痛剤で十分にコントロールできます。手術直後の痛みは2〜3日でピークを迎え、その後徐々に和らいでいきます。
抜糸後の痛みについて
手術後1週間から10日ほどで抜糸を行います。抜糸時には軽度の痛みを感じることがありますが、これは縫合糸が除去されることによる一時的なものです。抜糸後は手術部位の感染リスクが下がり、創傷治癒が進みます。ただし、完全に痛みがなくなるわけではなく、違和感や軽度の痛みが続く場合があります。これは創傷治癒の過程で起こる正常な症状であり、徐々に改善していきます。
治療完了後の違和感と痛み
インプラント治療が完了し、上部構造(被せ物)が装着されると、噛み合わせの調整が行われます。この時点でも違和感や痛みを感じることが稀にあります。
▶ 噛み合わせ時の痛み
新しい被せ物に慣れるまでは、噛み合わせ時に痛みを感じることが稀にあります。これは咬合力が適切に分散されていないことが原因で起こります。痛みが続く場合は、歯科医師による咬合調整が必要です。調整によって徐々に痛みは改善されていきます。
▶インプラント周辺部の痛み
インプラントの周りに汚れが溜まるとインプラント周囲の歯肉に痛みを感じることがあります。これはインプラント周囲炎と呼ばれる状態で、歯肉の炎症が原因です。とても軽度の場合は、適切な口腔ケアを行うことで炎症は改善し、痛みも徐々に和らいでいきます。ただし、痛みが強い場合や長期間続く場合は、歯科医師に相談しましょう。
インプラント術後に痛みが起こる原因と対処が必要なケース
インプラント手術後に痛みが生じるのは、身体の自然な治癒過程の一部です。ただし、痛みの原因によっては適切な対処が必要になります。
手術による組織への侵襲
インプラント手術では、歯茎を切開してあごの骨に穴を開けます。この過程で神経や血管、筋肉などの組織にダメージを与えるため、痛みが生じます。手術の規模が大きいほど、痛みも強くなる傾向があります。痛み止めを飲んで安静にしていれば、通常は数日で痛みは和らぎます。
骨造成を伴う場合の痛み
インプラントを埋入するために十分な骨の厚みや高さがない場合、骨造成手術が必要になります。骨造成の方法は様々ありますが、代表的なものとしてGBR法(骨誘導再生法)があります。GBR法では、不足している骨の部分に人工骨や他の部位から採取した自家骨を移植し、特殊な膜で覆うことで骨の再生を促します。骨造成手術では通常のインプラント手術よりも広範囲の組織を扱うため、術後の痛みが強くなることがあります。痛みへの対処法は通常のインプラント手術と同様ですが、回復にはより時間がかかります。
感染リスクによる痛み
手術部位に細菌が入り込んで感染すると、強い痛みを伴う腫れが生じます。感染が疑われる場合は、すぐに歯科医師に連絡しましょう。抗生物質の投与や切開排膿などの処置が必要になる場合もあります。適切な治療を行えば、感染は治まり痛みも改善します。
過度な負荷による痛み
インプラント治療が完了した直後は、インプラントに過度な力がかからないよう注意が必要です。硬いものを噛んだり、インプラントに強い力がかかったりすると、痛みが生じることがあります。柔らかい食べ物から徐々に慣らしていくと良いでしょう。痛みが続く場合は、かみ合わせの調整が必要な可能性があります。歯科医師に相談して適切な対処を行いましょう。
インプラント術後の痛みを和らげる5つの対処法
インプラント手術後の痛みは、適切な対処を行うことで和らげることができます。ここでは、痛みを緩和するための5つの方法をご紹介します。
処方薬の正しい服用方法
歯科医師から処方された痛み止めや抗生物質は、指示された通りに服用することが大切です。痛みが強い場合は、我慢せずに薬を飲みましょう。ただし、痛みが和らいできたら、医師に相談の上で薬の量を減らしていくことが重要です。長期間の使用は避けましょう。
冷却による腫れと痛みの緩和
手術直後は、患部を冷やすことで痛みと腫れを和らげることができますが、冷やしすぎは治癒を遅らせますので注意が必要です。なるべく患部に氷を当てるなどの冷却はしない方が良いでしょう。
食事と生活習慣の注意点
手術後しばらくの間は、患部に負担をかけないよう、柔らかい食べ物を選びましょう。また、十分な睡眠をとり、体調管理に気を付けることも大切です。喫煙は創傷治癒を遅らせるため、禁煙が推奨されます。
適切な口腔ケアの方法
手術後は患部を清潔に保つことが重要ですが、無理に手術部の歯肉をブラッシングする必要はありません。隣の歯を柔らかい歯ブラシで優しく磨きましょう。歯科医師の指示に従って、適切な方法で口腔ケアを行ってください。
安静時間の確保と運動制限
手術後は安静を保つことが大切です。激しい運動は避け、日常生活も無理のない範囲で過ごしましょう。安静時間を十分にとることで、痛みを和らげ、治癒を促進することができます。
インプラント術後の注意すべき異常な痛みのサイン
インプラント手術後のある程度の痛みは正常ですが、中には異常な痛みもあります。そのようなサインを見逃さないことが大切です。
痛み止めが効かない持続的な痛み
手術後しばらくは痛みのためによく眠れないこともありますが、痛み止めを飲んでも一向に痛みが引かない場合は要注意です。痛みが強くなったり、痛む範囲が広がったりする場合は、感染や神経の損傷などの可能性があります。処置内容にもよりますが、我慢せずに歯科医師に相談しましょう。
腫れの悪化や発熱を伴う痛み
手術後は多少の腫れは避けられませんが、一般的に2~3日後が腫れのピークですが、それ以降も腫れが徐々にひどくなる場合は異常のサインかもしれません。悪寒や倦怠感などの全身症状がある場合は、すぐに歯科医師に連絡を取りましょう。
出血や排膿を伴う痛み
手術後24時間以内にわずかな出血が見られることはありますが、24時間後以降も継続的に自然な出血が続く場合は問題のサインかもしれません。また、手術部位から膿が出てくる(排膿する)ようであれば、感染している可能性もあります。痛みに加えてこのような症状がある場合は、早急に治療が必要です。
噛み合わせの異常による痛み
インプラント治療後にかみ合わせがうまくいかず、痛みが生じることがあります。他の歯に負担がかかりすぎたり、インプラント自体に過度の力がかかったりすると、痛みの原因になります。痛みが長引く場合は、かみ合わせの調整が必要かもしれません。歯科医師に相談しましょう。
【Q&A】インプラント術後の痛みについて|気になる疑問を解決
ここでは、インプラント手術を受けた方や受ける予定の方から寄せられる、よくある質問にお答えします。
インプラント術後の痛みはいつまで続きますか?
▶ 痛みの種類と期間の目安
インプラント手術後の痛みは、手術の種類や個人差によって異なります。通常、手術後3日から1週間ほどで徐々に痛みは和らいでいきます。ただし、違和感や軽度の痛みが数週間続くこともあります。骨の結合が完了するまでには数ヶ月かかるため、その間は多少の不快感が残ることもあります。
▶個人差が生じる要因
痛みの程度や期間には個人差があります。年齢や全身の健康状態、手術の難易度、術後のケアの良し悪しなどが影響します。喫煙習慣がある方は、治癒が遅れて痛みが長引く傾向があります。
インプラント術後の痛みはどの程度まで我慢すべきですか?
▶正常な痛みの範囲
手術後の痛みは徐々に和らぐのが普通です。鎮痛剤を飲んで様子を見るのが一般的ですが、痛みが強くて耐えられない場合は我慢する必要はありません。痛みのために日常生活に支障が出るようであれば、歯科医師に相談しましょう。
▶受診が必要なケース
次のような場合は、我慢せずに歯科医師の診察を受けることが大切です。
- – 痛み止めを飲んでも痛みが引かない
- – 痛みが日に日に強くなる
- – 腫れがひどくなり、発熱を伴う
- – 出血や排膿が止まらない
- – 痛みのために食事や睡眠が取れない
術後の痛みを軽減するために気をつけることは?
▶日常生活での注意点
手術直後は安静を心がけ、患部を清潔に保つことが大切です。喫煙は避け、アルコールも控えめにしましょう。入浴は歯科医師に相談の上、できるだけシャワーにします。激しい運動は避けますが、軽い散歩などの適度な運動は血行を促進するのでおすすめです。
▶食事の制限について
手術直後は冷たいものや柔らかいもの、刺激の少ないものから始めます。徐々に普通の食事に戻していきますが、硬いものや粘りけのあるものは避けましょう。十分な栄養と水分を取ることが、痛みの緩和と治癒の促進につながります。
まとめ:インプラント術後の痛みと上手に付き合うために
これまで説明してきたように、インプラント手術後の痛みは避けられないものですが、正しい知識とケアを身につければ、痛みと上手に付き合っていくことができます。ここでは、これまでの内容を振り返り、ポイントを整理しましょう。
インプラント術後の痛みの基本ポイント
▶正常な痛みの特徴と経過
インプラント手術後の痛みは、治癒過程の一部であり、通常は時間とともに和らいでいきます。手術直後から数日間は比較的強い痛みがありますが、徐々に軽減していくのが普通です。ただし、完全に違和感がなくなるまでには数週間から数ヶ月かかることもあります。
▶要注意の痛みのサイン
時間が経つにつれて痛みが強くなったり、腫れがひどくなったりする場合は要注意です。特に発熱や膿の排出を伴う場合は、感染の疑いがあります。このような異常な痛みのサインがある場合は、我慢せずに歯科医師に相談しましょう。
痛みの緩和と予防のための3つのケア
▶基本的な対処法の実践
痛み止めの服用、患部の冷却、安静の確保など、痛みを和らげるための基本的な対処法を実践しましょう。無理のない範囲で日常生活を送りながら、痛みに対するケアをしていくことが大切です。
▶生活習慣の見直し
喫煙や過度のアルコール摂取は、治癒を遅らせ、痛みを長引かせる原因になります。手術後は生活習慣を見直し、体調管理に気を付けましょう。バランスの取れた食事と十分な睡眠は、痛みの緩和と治癒の促進につながります。
安心して治療を受けるために
▶歯科医師に相談するタイミング
痛みの程度や経過に不安を感じたら、遠慮なく歯科医師に相談しましょう。我慢し過ぎは禁物です。早めの対処が、痛みの悪化を防ぎ、スムーズな回復につながります。
▶日常生活での注意事項
インプラント手術後は、日常生活にも注意が必要です。激しい運動は避け、患部に負担をかけないよう気を付けましょう。また、定期的な通院を守り、歯科医師の指示に従って口腔ケアを行うことが大切です。
インプラント手術は、失った歯の機能を取り戻すために重要な治療ですが、術後の痛みは避けて通れません。しかし、正しい知識を持ち、適切なケアを行えば、痛みは徐々に和らぎ、インプラントのメリットを十分に感じられるようになります。痛みに負けず、前向きな気持ちで治療に臨みましょう。
前橋かんだ歯科・矯正歯科では、患者様に寄り添った丁寧な治療とアフターケアを心がけています。
インプラント手術後の痛みに不安を感じている方は、遠慮なく当院にご相談ください。安心して治療を受けていただくために、全力でサポートいたします。
皆様のご来院をお待ちしております。
前橋かんだ歯科・矯正歯科
院長 神田 雄紀