インプラントがあっても矯正できる?できる場合とできない場合の違い
2025.02.27
皆さん、こんにちは。
群馬県前橋市にある前橋かんだ歯科・矯正歯科の院長 神田 雄紀です。
「インプラントを入れているけど、歯並びも気になる…」「インプラントがあると矯正治療はできないのかな?」「治療費用や期間はどのくらいかかるのだろう?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
実は、インプラントがあっても矯正治療が可能なケースは多く、インプラントの位置や本数、治療のタイミングによって適切な治療方法を選択できます。
この記事では、歯科医師が、インプラントと矯正治療の両立が可能なケースと不可能なケース、治療を成功させるための重要なポイント、そして実際の治療例をわかりやすく解説していきます。
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目次
インプラント治療の基本と特徴
インプラント治療は、歯を失ってしまった患者様に対して、人工の歯根を顎の骨に埋め込むことで、天然の歯のような機能を回復させる治療法です。インプラントは、従来の入れ歯やブリッジとは異なり、周辺の歯を削る必要がなく、自分の歯のような自然な感覚で食事や会話を楽しむことができます。
インプラントとは?仕組みと役割
インプラントは、チタンなどの生体親和性の高い材料で作られた人工歯根のことを指します。これを顎の骨に埋め込み、骨と一体化させることで、しっかりとした土台を作ります。その上に、歯冠(人工の歯)を取り付けることで、見た目も機能も天然の歯のように回復させることができるのです。インプラントは、単独の歯を失った場合だけでなく、複数の歯や全ての歯を失った場合にも適用できる優れた治療法です。
インプラント治療のメリットとデメリット
インプラント治療の最大のメリットは、自分の歯のような自然な感覚で食事や会話ができることです。入れ歯やブリッジとは異なり、周辺の歯を削る必要がないため、残っている健康な歯を守ることができます。また、インプラントは顎の骨に直接埋め込まれるため、骨の萎縮を防ぐ効果も期待できます。一方で、インプラント治療はある程度の手術を伴うため、治療期間が長くなることや、コストが高くなることがデメリットとして挙げられます。また、糖尿病などの全身疾患がある場合や、喫煙習慣のある方は、インプラントの成功率が下がる可能性があります。
インプラントは矯正で動かせない?その理由を解説
インプラントが動かない理由
歯科矯正治療は、歯に矯正装置からの力を加えることで、歯を動かし、歯並びを改善する治療法です。しかし、インプラントは顎の骨とチタンでできた人工歯根が直接結合しているため、矯正装置からの力を加えても動かすことができません。天然の歯は歯根膜という組織によって顎の骨とつながっているため、この歯根膜を介して矯正力が伝わり、歯が動くことができるのです。一方、インプラントには歯根膜がないため、矯正力が伝わらず、動かすことができないのです。
インプラントと矯正の関係性
インプラントは動かせないため、インプラント治療を行った歯を含めた部分の矯正治療は難しくなります。しかし、インプラントを避けて、他の歯だけを動かすことは可能です。また、インプラント治療を行う前に矯正治療を行い、歯並びを整えておくことで、インプラント治療がスムーズに行えるようになります。逆に、インプラント治療を先に行ってしまうと、その後の矯正治療が制限されてしまうことがあるので注意が必要です。
治療前に確認すべき3つのポイント
インプラントを埋入する前に、矯正治療の必要性について、歯科医師とよく相談することが大切です。以下の3つのポイントを確認し、適切な治療計画を立てましょう。
- 1.インプラントを埋入する部位の歯並びを確認する
- 2.インプラント治療後に矯正治療が必要になる可能性を検討する
- 3.インプラント治療と矯正治療の順序を決める
これらのポイントを踏まえ、歯科医師と相談しながら、自分に合った治療計画を立てることが重要です。
インプラントがあっても矯正できる場合・できない場合
矯正治療が可能なケース
▶インプラントの位置による判断
インプラントがあっても、矯正治療ができる場合があります。それは、インプラントの位置によって判断されます。例えば、奥歯の一番後ろにインプラントがある場合、前歯やその他の歯を動かす矯正治療は可能です。また、上の歯と下の歯が噛み合わない「開咬」という状態の場合、インプラントを支点にして、他の歯を動かす矯正治療ができることがあります。
▶インプラントの本数による判断
インプラントの本数も、矯正治療ができるかどうかの判断材料になります。インプラントの本数が少ない場合、他の多くの歯を動かす矯正治療が可能です。一方、インプラントの本数が多い場合は、矯正治療の選択肢が限られてきます。ただし、インプラントの本数が多くても、歯並びの状態によっては、部分的な矯正治療ができる場合もあります。
▶治療時期による判断
インプラント治療を受けてからの時期も、矯正治療ができるかどうかに影響します。インプラント治療が完了してから時間が経っている場合は、インプラントが顎の骨としっかりと結合しているため、矯正治療が可能です。ただし、インプラント治療直後は、インプラントが顎の骨と完全に結合していないため、矯正治療は避けた方が良いでしょう。
矯正治療が難しいケース
▶インプラント周辺の歯を大きく動かす場合
インプラントの両隣の歯を大きく動かすような矯正治療は難しいです。インプラントは顎の骨としっかりと結合しているため、隣の歯を動かそうとすると、インプラントに大きな力がかかってしまいます。この力は、インプラントを損傷したり、周りの骨を痛めたりする可能性があるため、避ける必要があります。
▶多数のインプラントがある場合
インプラントの本数が多い場合、矯正治療の選択肢は限られてきます。特に、前歯部分に多くのインプラントがある場合は、矯正治療が非常に難しくなります。前歯は、笑顔の印象に大きく影響するため、慎重に治療方法を選ぶ必要があります。
▶治療直後のインプラントがある場合
インプラント治療直後は、インプラントが顎の骨としっかりと結合していないため、矯正治療は避けるべきです。矯正治療の力が加わることで、インプラントが動いてしまい、治療が失敗に終わる可能性があります。インプラントが顎の骨と完全に結合するまでは、矯正治療を始めるべきではありません。
インプラントがある場合の矯正治療の注意点
治療前の検査と診断の重要性
インプラントがある場合の矯正治療では、治療前の検査と診断がとても重要です。歯科医師は、レントゲン写真や CT 画像などを使って、インプラントの位置や状態、周りの骨の状態を詳しく調べます。また、口の中の型取りを行い、歯並びの状態を確認します。これらの情報を元に、インプラントを避けて歯を動かす方法や、インプラントを利用した矯正治療の可能性を検討します。適切な検査と診断なしに治療を始めてしまうと、インプラントを傷つけたり、治療が失敗したりする可能性があります。
インプラント周辺の歯の動かし方
インプラント周辺の歯を動かす場合は、慎重に力の加え方を調整する必要があります。強すぎる力を加えると、インプラントに負担がかかり、傷ついてしまうかもしれません。また、インプラントは動かせないため、周りの歯を動かすことで、歯並びのバランスが崩れてしまう可能性もあります。歯科医師は、これらのリスクを考慮しながら、ゆっくりと慎重に歯を動かしていきます。
定期的なメンテナンスの必要性
インプラントがある場合の矯正治療では、定期的なメンテナンスがとても大切です。矯正装置によって歯垢がたまりやすくなったり、歯ぐきが腫れたりすることがあるため、ブラッシングやフロスを使ったセルフケアが欠かせません。また、定期的に歯科医院で専門的なクリーニングを受けることも重要です。治療中は、インプラントの状態や歯ぐきの健康状態を注意深く観察し、問題があれば早めに対処する必要があります。
インプラントと矯正の治療順序と進め方
インプラント治療と矯正治療を両方行う場合、どちらを先に行うべきでしょうか。これは、患者様の歯の状態や治療の目的によって異なります。ここでは、3つのパターンに分けて説明します。
矯正治療を先に行うケース
歯並びが大きく乱れている場合や、インプラントを入れる予定の場所に十分なスペースがない場合は、まず矯正治療を行うことがおすすめです。矯正治療で歯並びを整えておくことで、インプラントを入れる場所を確保し、より自然な見た目の歯列を作ることができます。また、インプラントを入れる前に歯並びを整えておくことで、インプラントにかかる力の分散を図る事ができ、インプラントの寿命が長くなる可能性があります。
インプラント治療を先に行うケース
欠損している歯が多く、審美的な面や機能的な面でインプラントを先に行った方が良い場合もあります。ただし、インプラント治療後すぐに矯正治療を始めるのは避けた方が良いでしょう。インプラントが顎の骨としっかり結合するまで、3〜6ヶ月ほど待ってから矯正治療を始めるのが一般的です。
両治療を並行して行うケース
軽度の歯並びの乱れがある場合や、部分的な矯正治療で対応できる場合は、インプラント治療と矯正治療を並行して行うことができます。ただし、歯を動かす力の固定にインプラントを利用する場合、インプラントが顎の骨としっかり結合してから矯正治療を始める必要があります。また、矯正治療の方法や装置の選択には注意が必要です。インプラントに負担をかけすぎないよう、歯科医師と相談しながら慎重に進めていきましょう。
インプラント矯正とは?通常の矯正治療との違い
インプラント矯正については、本記事の主題とは少し異なる内容になりますが、勘違いしやすく患者様からご質問をいただくこともありますので、ここで簡単に触れておきます。
インプラント矯正の特徴
インプラント矯正とは、骨に直接固定できる専用の矯正用アンカーを活用する矯正方法です。
歯ぐきの骨部分に極小のスクリューを設置し、それを支点として効果的に歯を移動させる手法です。
歯の欠損修復に使用される「インプラント」とは異なり、矯正用のアンカーは矯正治療期間中のみ使用します。
アンカーは顎の骨にしっかりと固定されているため、歯を動かすための強い力を加えることができます。この特徴を活かして、通常の矯正治療では難しいケースでも、歯を動かすことが可能になります。
治療期間と費用の目安
インプラント矯正の治療期間は、患者様の歯並びの状態や、治療方法によって異なります。平均的には、1年半から2、3年ほどかかります。ただし、歯並びの状態が複雑な場合は、さらに長くかかることもあります。
費用については、通常の矯正治療よりも高くなる傾向があります。これは、アンカーを使用するため、その費用が加わることが主な理由です。また、治療期間が長くなると、費用も増えていきます。具体的な費用は、歯科医院によって異なるため、事前に相談することをおすすめします。
インプラントと矯正に関する<よくある質問>
Q. インプラントを入れた後、すぐに矯正治療はできますか?
インプラントを入れた直後は、インプラントが顎の骨としっかり結合していないため、すぐに矯正治療を始めることはおすすめできません。一般的には、インプラントを入れてから3〜6ヶ月ほど待ち、インプラントが顎の骨と一体化してから矯正治療を始めます。
Q. インプラントと矯正、どちらの治療を先に行うべきですか?
これは患者様の歯の状態や治療の目的によって異なります。歯並びが大きく乱れている場合は矯正治療を先に、欠損している歯が原因で日常生活に支障をきたしている場合はインプラント治療を先に行うことが一般的です。ただし、個人差が大きいので、歯科医師と相談して決めることが大切です。
Q. インプラントがある状態での矯正治療期間はどのくらいですか?
インプラントがある場合の矯正治療期間は、患者様の歯並びの状態や治療方法によって大きく異なります。比較的軽度の歯並びの乱れであれば6ヶ月〜1年程度、複雑な症例では2年以上かかることもあります。平均的には1年半〜2年半程度と考えられています。
Q. インプラントがある場合の矯正治療費用は通常より高くなりますか?
インプラントがある場合の矯正治療は、通常の矯正治療よりも難易度が高く、治療期間も長くなる傾向があるため、費用は高くなる可能性があります。ただし、個人差が大きいので、一概には言えません。詳細は歯科医師に相談することをおすすめします。
Q. インプラントと矯正治療を同時に行うことは可能ですか?
可能ではありますが、インプラントを入れた直後に矯正治療を始めるのは避けた方が良いでしょう。インプラントが顎の骨としっかり結合するまで、3〜6ヶ月ほど待ってから矯正治療を始めるのが一般的です。また、矯正治療の方法や装置の選択には注意が必要です。歯科医師と相談しながら慎重に進めることが大切です。
Q. インプラントの周りの歯を矯正で動かしても大丈夫ですか?
インプラントの周りの歯を矯正で動かすことは可能ですが、慎重に行う必要があります。インプラントは顎の骨としっかり結合しているため、周りの歯を動かすことで、インプラントに負担がかかる可能性があります。歯科医師が、インプラントの状態や周りの骨の状態を確認し、慎重に治療計画を立てることが大切です。
Q. インプラント矯正の場合、食事制限はありますか?
インプラント矯正の場合も、通常の矯正治療と同様に、硬いものや粘りつくものは避けた方が良いでしょう。矯正装置に食べ物が挟まったり、装置が外れたりする可能性があるためです。
Q. インプラントと矯正の両方をする場合の治療の成功率はどのくらいですか?
インプラントと矯正の両方を行う場合の成功率は、それぞれの治療の成功率に左右されます。インプラント治療の成功率は90%以上、矯正治療の成功率は95%以上と言われています。ただし、患者様の年齢や全身の健康状態、歯の状態などによって個人差があります。治療前に、歯科医師とよく相談し、リスクや限界についても理解しておくことが大切です。
まとめ:インプラントがある方の矯正治療の可能性と注意点
インプラントがあっても矯正できるケースの3つのポイント
1. インプラントの位置が適切な場合
インプラントが奥歯の一番後ろにある場合や、上の歯と下の歯が噛み合わない部分にある場合は、インプラントを避けて他の歯を動かすことができます。
2. インプラントの本数が少ない場合
インプラントの本数が少ない場合は、インプラントを避けて多くの歯を動かすことができます。
3. 治療のタイミングが適切な場合
インプラントが顎の骨としっかり結合してから(インプラント手術から3〜6ヶ月後)矯正治療を始めることが大切です。
矯正治療を成功させるための重要事項
1. 事前の詳しい検査と診断
インプラントの状態や周りの骨の状態を詳しく調べ、適切な治療計画を立てることが大切です。
2. 治療計画の綿密な立案
インプラントにかかる負担を最小限に抑え、歯並びを整えるための治療計画を綿密に立てる必要があります。
3. 定期的なメンテナンス
治療中は定期的に歯科医院でチェックを受け、歯垢除去などのメンテナンスを行うことが大切です。
インプラントと矯正の治療選択のポイント
1. 治療順序の決定
歯の状態や治療の目的に合わせて、インプラント治療と矯正治療の順序を決める必要があります。
2. 費用と期間の確認
インプラントがある場合の矯正治療は、通常よりも費用が高く、期間が長くなる傾向があります。事前に確認しておきましょう。
3. 歯科医師への相談
インプラントがある場合の矯正治療は難易度が高いので、経験豊富な歯科医師に相談することが大切です。
インプラントがあっても、矯正治療は可能です。ただし、インプラントの状態や本数、治療のタイミングによって、可能なケースと難しいケースがあります。事前の検査と診断を綿密に行い、適切な治療計画を立てることが大切です。また、治療中は定期的なメンテナンスを忘れずに。
矯正治療は、見た目の改善だけでなく、噛み合わせの改善や歯の健康維持にも大きな役割を果たします。インプラントがあっても、諦める必要はありません。ぜひ、歯科医師に相談して、自分に合った治療法を見つけてください。
前橋かんだ歯科・矯正歯科では、お一人おひとりに合わせた最適な治療計画をご提案しています。歯並びやかみ合わせの改善は、見た目の美しさだけでなく、食事や会話など日常生活の質の向上にもつながります。インプラントがあるからと諦めず、ぜひ一度当院にご相談ください。
皆様のご来院をお待ちしております。
前橋かんだ歯科・矯正歯科
院長 神田 雄紀