乳歯の虫歯
2025.02.13
乳歯の虫歯が永久歯に及ぼす影響として今回はお話しさせて頂きます。
「しっかり歯磨きをしているし、定期健診を受けてもいるのに虫歯になってしまった…。」「なかなかうまくブラッシングができない…。」といった親御さんの困った声を聞く事があります。また、実際虫歯になってしまっていることを伝えられショックを受けらている方もいると思われます。
乳歯が虫歯になりやすい理由や早期で発見するために知っておくべき予防法についても解説して行きます。
乳歯が永久歯に及ぼす影響
①歯並びや噛み合わせが悪くなる
「いずれ抜けて永久歯に生え変わるからいいや」などと乳歯の虫歯を放置してしまった結果、早期に乳歯を抜かなくてはいけなくなってしまうと、抜けた隙間を埋めようと歯が動いて傾き、永久歯が生えるスペースが狭くなって歯並びやかみ合わせが悪くなってしまいます。
②永久歯の発育や形成に影響
乳歯の重度な虫歯を放置していると、根の先の細菌が下から生えてくる永久歯に影響し、発育不全を起こすケースもあります。また、生えたての乳歯に白い斑点ができたり茶色く着色した永久歯が生えてくる可能性も出てしまいます。それを「エナメル質形成不全」といい虫歯菌の影響を受けやすい歯になってしまいます。
③永久歯の虫歯リスクが高くなる
虫歯を放置するとお口の中の細菌も増え、他の歯が虫歯の菌にさられるリスクが高くなってしまいます。乳歯と永久歯が混在している口腔内では、生えたての永久歯の虫歯リスクが高くなります。
④顎の発達を妨げる
虫歯が出来てしまうと痛みから避けるために反対側の歯で噛む癖がついてしまい、顎の発育バランスが悪くなったり噛む力が弱くなったりします。
⑤口腔習癖を引き起こす
虫歯により歯が気になると、指しゃぶりや舌を動かすような癖がついてしまう事もあるかもしれません。また前歯が欠如するとその隙間を埋めるように舌を突き出す仕草をしてしまいやすくなります。
なぜ乳歯は虫歯になりやすく進行も早いのか
虫歯は虫歯菌の原因菌(ミュータンス菌や乳酸桿菌)が出す酸によって歯が溶かされ、やがて穴が開いてしまいます。歯の表面は「エナメル質」という人体で最も硬い組織で覆われていて、その下に「象牙質」という組織がありこの中央に神経が通っています。乳歯は永久歯に比べエナメル質と象牙質の厚さが半分ほどしかなく、酸に対する抵抗力が弱いため虫歯になりやすく進行も早いのです。
初期の虫歯は痛みを感じにくく、特にお子様の場合は痛みや違和感があってもうまく伝えられずに、発見が遅くなってしまう事もあります。そうなると気付いた時には穴が大きく開いてしまったり、重度に進行していたということもあります。
虫歯菌は糖をエサに酸を作り出し、歯を溶かします。しかし食後は唾液の作用によって歯の表面は中性に戻り「再石灰化」と言って溶けかけた歯を中和します。食事やおやつ、ジュースをだらだら食べたり飲んだりし続けたり、甘い物の摂取回数が多くなると中和にかかる唾液の作用時間が充分に得られず、再び歯が酸性環境にさらされるため虫歯のリスクが高くなります。したがって食事やおやつを食べるときは、時間や間隔を決め唾液が作用する時間をしっかり作ることが大切です。またおやつの時はジュースではなくお茶や水にしたり、甘いものを摂取する際はなるべく食後のデザートとして食べるといいでしょう。
ブラッシングが丁寧にできていない
歯をしっかり磨いているつもりでも磨き残しがあると虫歯のリスクも高まります。小学校低学年ぐらいまでは、子供にとって歯を磨くということはとても難しい作業なので、保護者の方による「仕上げ磨き」がとても重要です。そのため、お子様が嫌がらないようであればできるだけ中学に入るまでは仕上げ磨きを行うと良いでしょう。そして子供自身ができない歯と歯の間にフロスを使用したり、フッ素の洗口剤やペーストの塗布なども行うとよいでしょう。
家族や周囲の人からの感染
虫歯の原因である虫歯菌は生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には存在しません。ではどこからやってくるのでしょう。出産時の胎盤通過時点での母子感染もありますが、ほとんどが家族や周りの人からの感染によるものです。一生涯虫歯にならない人は稀ですが、特に虫歯が多い人は、生後1歳半から2歳半ぐらいの幼少期に虫歯菌に感染していると言われております。この時期に特に親や兄弟・姉妹とのふれあいから虫歯菌が移ることもあります。例えばスプーンや箸の使い回し、食べ物を口移しであげたり、キスをすることも虫歯菌が移るきっかけになりえます。ただし過剰になりすぎて大切なスキンシップをなくさないようにしましょう。その分ご家族全員がお口の定期的な管理をされるとよいでしょう。
このように乳歯の虫歯を放置しておくと将来的に生えてくる永久歯への悪影響が懸念されるので、見つけたら必ず早めに治療を行う必要があります。もちろん虫歯にしない・させないことが第一なので自宅でできる予防法を欠かさないようにした上で歯科医院での定期的な検診をお勧めします。