滅菌・消毒
2024.07.31
新型コロナウイルスの流行の影響により衛生管理に関する用語をよく耳にするようになってきたかと思われます。歯科においても感染対策に加え、器具の滅菌や消毒がより一層注目されるようになってきました。その中でも重要なのが滅菌です。
消毒や殺菌、除菌といった言葉とどのような違いがあるのか?何かと耳にするワードでありますがそれぞれの言葉の違いを理解している人はさほど多くないかもしれません。特に歯科では治療に使用する器具が清潔でなければいけませんので今回は感染予防対策としてわかりやすく解説して行きたいと思います。
<滅菌とは?>
滅菌は病原体を排除するという意味では最も効果の高い措置と言えます。
有害・無害を問わずすべての微生物及びウイルスなどを熱や圧力で死滅または除去することを言います。よって滅菌後の器具は無菌状態になります。
<消毒とは?>
細菌の活動を弱めることで感染力を失わせ、細菌の持っている有毒性を弱めることにつながります。しかし無菌化することはできません。
<殺菌とは?>
特定の細菌のみをターゲットにして病原性や有毒性を有する糸状菌、細菌、ウイルスなどの一部の微生物を死滅させることを言います。しかしすべての微生物を死滅させるものではありません。スプレーやシートなど日常生活でも使用するケースが多い言葉ですが汚れなどを物理的に取り除くことを意味します。よって微生物を殺す作用は期待できません。
歯科医院で使用する器具は患者様のお口の中に入れて使用する際に血液や唾液と触れることがあります。以前、歯を削る機器「ハンドピース」の使い回しが全国で7割近くという残念な記事が新聞で記事にされ話題になったことがありました。現在ではほとんどの歯科医院で院内感染対策として患者さんごとの交換が必須で、滅菌処置を施されていると思います。
歯科治療に使用する器具の内部に付着した細菌やウイルスは単に洗浄や消毒するだけでは取り除くことができません。滅菌処置が行われていないとウイルス(エイズ・梅毒・B型肝炎・C型肝炎など)や細菌がほかの患者さんに感染する恐れがあります。院内感染の大きな問題点として感染力の弱い高齢者や免疫力の低下している患者さんが感染しやすいということがあり、目には見えない細菌やウイルスはいつどこで感染したのかわからないまま症状が進行してしまう事も考えられます。
そこで院内感染の標準予防策としてアメリカ疾病管理予防センターではスタンダードプレコーションと言いすべての人は伝達する病原体を有しているという考えに基づき対応するべきとされています。
滅菌対策
滅菌方法は各種色々ありますが、歯科で一般的に用いられるのがオートクレーブ滅菌(高圧蒸気滅菌)です。
121℃で20分間に2気圧をかけて滅菌を行ないます。
現在はクラスBと言って最も厳格な標準で最高レベルの滅菌ができるものがあります。超音波洗浄で付着物を除去後オートクレーブで滅菌することが強く推奨されています。また安全性を図るためグローブやエプロン、紙コップ等はディスポーザブル(使い捨て)を使います。
このように衛生管理の用語には、わかりづらく何が違うのか知っているようで意外とわからないものがたくさんあります。感染予防対策として滅菌がとても重要である事と歯科の受診をされる際、患者さんが「しっかり滅菌されているのか?」「消毒はしっかりしてあるのか?」と思うところではあるかと思いますので安心して受診できる環境づくりをとっていることをご理解いただければと思います。